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恒温恒湿室とは?

製造や研究開発において、恒温恒湿環境が必要となるケースがあります。その理由や、恒温恒湿室の特徴について解説します。

恒温恒湿環境が必要なケースとは

恒温とは温度を一定にすること、恒湿とは湿度を一定にすることです。つまり、恒温恒湿環境とは「温度と湿度が一定に保たれた環境」のことをいいます。工業製品や医薬品などの製造や研究開発において、恒温恒湿環境が必要となるケースがあります。

例えば、製造においては温度と湿度が一定の環境で製造することで生産性が安定します。また、温度や湿度などの製造条件を追跡しやすくなり(トレーサビリティ)、品質の安定や不良品の軽減などにもつながります。また、原材料や試薬の状態を均一に保つためにも、恒温恒湿環境での保管が必要となります。

研究開発においては、様々なデータを取得し比較することが重要です。特に、温度や湿度が変化することで特性や状態が変化する素材の試験においては、恒温恒湿環境が必須です。材料試験や基礎研究などの場合は、JISやISOなどの規格で環境条件が定められている場合もあり、繰り返し試験を行う場合であっても、温度や湿度などを常に一定にする必要があります。JISで定められた一定の恒温恒湿環境(※1)を標準とし、標準時と同等の性能が得られるかなどを試験します。

※1 JIS Z 8703「試験場所の標準状態」によると、温度の条件は20℃、23℃、25℃、湿度の条件は50%か65%の環境が一般的な標準条件と定められています。ほとんどの恒温恒湿室が23℃50%にされていることが多いです。

恒温恒湿室とは

温度や湿度などの環境条件を標準状態に設定した設備を、恒温恒湿室といいます。標準室または標準試験室と呼ばれることもあります。似たような設備に環境試験室がありますが、これは環境条件を任意に調整して様々な環境を疑似的に再現できる設備のことです。また、恒温恒湿室が一室を丸ごと恒温恒湿環境にできる設備であるのに対し、より小さな箱型の設備のことを恒温恒湿槽(恒温恒湿器)と呼びます。

恒温恒湿室の導入の一例をご紹介します。

  • 大学や研究施設の計測室、実験室、調合室など
  • 様々な製品の製造工場や検査工程など
  • 耐久性試験や安定性試験など一定環境下でのデータ収集
  • 温度や湿度の変化に弱い素材や製品の保管
  • 機器類の校正

紙、金属、フィルムなど温度・湿度の変化に弱い素材や、水分含有量によって強度や耐久性、形状や伸縮性などが変化する素材を扱う場合は一定の温度・湿度が欠かせません。また、一定の温湿度を保つ必要がある植物工場(植物培養)にも用いられます。特に精密な温湿度管理や清浄度の高い作業空間が求められる場合は、恒温恒湿室とクリーンルームと組み合わせた「恒温恒湿クリーンルーム」として導入されることもあります。

恒温恒湿室の方式

恒温恒湿室には、温度と湿度をリアルタイムで計測するセンサーが備え付けられており、常に温度と湿度が一定になるよう冷却媒体や熱交換器などを制御しています。恒温恒湿室は、温湿度のコントロール方法によって弊社では2つの方式に分けています。それぞれ解説します。
※条件によって下記の方式以外を採用する事もあります。

直接膨張方式(直膨式)

直接膨張方式(直膨式)は、空調機器の冷却方式のひとつであり、冷媒を用いて直接空気を冷却します。冷却・除湿と加熱・加湿を行い、温度と湿度をコントロールします。まず、室内に吸い込まれた空気を冷却コイルで冷却・除湿します。その後、再加熱ヒーターで設定された温度まで再度加熱し、加湿器を用いて湿度を調整します。冷却・除湿に加え、再加熱と加湿調整に多大な電力を要しますが、内部の熱量が多い場合や排気を取る必要がある設備がある場合などにもコントロールすることが可能になります。なお、加湿器等に不純物が付着しやすいため定期的なメンテナンスが重要となります。

散水露点飽和方式

散水露点飽和方式は、エアワッシャーを用いて空気中に散水する方式であり、水蒸気を限界まで含んだ飽和空気を作ってから加熱のみを行い、温度と湿度をコントロールします。露点飽和方式と呼ばれることもあります。冷却と湿度調整を同時に行い、再加熱するだけなので、一度冷却・除湿した空気を再加熱し、さらに加湿調整を行う直膨式と比べると電力消費量を低く抑えられるのが特徴です。冷却水の交換が主な保守となり、加湿器の清掃・メンテナンスなどは不要です。ただし、水を冷却媒体としていること、飽和空気を用いることから、低温や低湿には設定できません。また、局所的に大量の排気を伴う機器や、発熱する機器などを用いた作業にも不向きです。

恒温恒湿室の注意点

直接膨張方式も散水露点飽和方式も、冷却および湿度調整のために水が用いられます。サイズの小さな恒温恒湿槽の場合は、給水タンクや排水ホースなどで対応しますが、恒温恒湿室の場合は給排水の設備をどのように設計するかが重要となり、設置場所が制限される場合もあります。また、メンテナンスでは冷却水の交換と、冷却コイルやフィルタの清掃のほか、給排水設備の漏水チェックも重要です。万が一、漏水が生じてしまうと恒温恒湿室内の機器だけでなく周辺機器にも影響が及ぶおそれがあります。

設置場所、イニシャルコスト、ランニングコストなど、総合的検討が必要

恒温恒湿室の設置には一定のスペースが必要であり、空調設備の位置などの制限を受ける場合もあります。また、恒温恒湿室は一定の温度と湿度を保つために基本的には昼夜連続で運転します。導入にあたっては、設備費だけでなく、消費電力量やメンテナンスなどのランニングコストもあわせて総合的に検討する事も重要な要素となります。
恒温恒湿室のご検討中でしたらお気軽に弊社へご相談ください。