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清浄度の目安とは?

工業製品や食品・医薬品などの製造工程において用いられるクリーンルームは、空気の清浄度に合わせて「清浄度クラス」が定められています。清浄度クラスの各基準と、製造する製品や用途ごとの清浄度の目安について解説します。
※本ページ内の清浄度クラス表記はFed-Std.209D規格で記載しています。ISO規格については清浄度クラス比較表などで読み替えて下さい。

クリーンルームの清浄度クラス

クリーンルームの清浄度クラスは、現在は国際規格であるISO規格に統合されています。
古くからクリーンルーム業界において使われてきたFed-Std.規格はすでに廃止されていますが、清浄度や空気中の粒子の数などをイメージしやすいことから、現在も慣習的に使われることが多いのが実情です。ただし、ISO規格やJIS規格では空間を表す立方体の一片の長さをメートルで表しますが、Fed-Std.規格ではフィートで表現しているため注意が必要です。

ISO規格によると、クリーンルーム内の清浄度は、1立方メートルの空気中に存在する0.1μm以上の粒子数に基づき、粒子の大きさや数によってクラス分けされています。詳しくは以下の表をご覧ください。

クラスの数が小さくなるほど、清浄度が高くなります。具体的には、ISO規格におけるクラス1は「1立方メートルの空気中に存在する0.1μm以上の粒子数が10個以下」と定められており、わずかな微粒子の混入も許さない非常に清浄度の高いクリーンな空間ということになります。一般的に、清浄度クラスが高くなればなるほど、設備費や維持費、ランニングコストは高額になる傾向にあります。
以下はISO規格とFed-Std.209D規格の比較、換算表になります。

業種・用途ごとの清浄度の目安

業種・業界、製造する製品や作業内容などの用途によって、求められる清浄度クラスは異なります。クリーンルームを導入するにあたっては、必要な清浄度クラスを検討し決定する必要があります。

インダストリアルクリーンルーム(ICR)とバイオロジカルクリーンルーム(BCR)に分けて、ISO規格の清浄度クラスを基準として業種および用途ごとの清浄度の目安をご紹介します。

インダストリアルクリーンルーム(ICR)


半導体産業や電子機器産業などにおいては、目に見えない微細な塵やほこりなどを排除する必要があり、高性能フィルターによる微粒子の除去や静電気除去など行われます。半導体、液晶ディスプレイ、電子機器、精密機器、自動車など様々な工業品の製造工場などに導入されています。特に、半導体の製造工程においては最高クラスの清浄度が求められるケースもあります。

半導体/基盤工程、LSI(大規模集積回路)のウェーハ工程

=クラス100~1
半導体のウェーハ製造工程や露光工程、エッチング工程、蒸着工程や研磨などには、非常に清浄度の高い空間が求められます。シリコン単結晶、フォトマスク、フォトレジスト等の製造工程においても同様です。

半導体/組立工程、LSI(大規模集積回路)の組立・テスト工程

=クラス100,000~1,000
半導体の基盤工程と比べて求められる清浄度クラスはややゆるくなるものの、組立やテスト工程にも高い清浄度が求められます。

光学機器/高精度製品の生産工程および品質管理

=クラス10,000~100
カメラや望遠鏡などに用いられるレンズやレーザーの製造においては、研磨、洗浄、蒸着、組立、フィルム加工など様々な工程があります。高い精度が求められる光学機器の生産工程や品質管理には、クラス10,000~1,000が目安となります。

電子部品/電子部品の製造、組立、品質管理

=クラス10,000~100
プリント基板やコンデンサー、各種ディスクなど様々な電子部品の製造および組立工程はもちろん、品質検査工程においてもクラス10,000~100が求められます。

精密機械/加工、組立、検査、梱包など

=クラス100,000~100
精密機械の加工、組立などの工程のほか、検査および梱包工程においては、クラス10,000~100という清浄度の高い空間が求められます。時計やベアリングなどの精密機械の組立工程では、クラス100,000~1,000が求められる場合もあります。

自動車部品/組立、検査、塗装など

=クラス100,000~1,000
自動車部品の製造工程においては、鉄粉や金属くずなどが発生します。電装部品の製造工程のほか、組立、検査、内装および外装の塗装など様々な工程でクラス100,000~1,000が求められます。

印刷/前洗浄、塗装印刷、品質管理など

=クラス100,000~1,000
印刷物の仕上がりを良くするためには、チリやほこりの管理が欠かせません。前洗浄工程や塗装印刷工程のほか、品質向上や品質管理のために、クラス100,000~1,000が目安となります。

バイオロジカルクリーンルーム(BCR)

無塵・無菌環境が求められる食品業界や医薬品業界においては、塵やほこり、ゴミ、不純物、虫だけでなく、微生物や細菌などの混入も防いで生物的にも清浄度の高い作業空間が求められます。食品製造工場においては、加工や梱包など様々な工程で異物や微粒子等の混入を防止し、衛生的にクリーンな作業環境を保つ必要があります。医薬品の製造工場や、研究・開発を行う研究所、病院等においても、塵やほこり、微生物、細菌やウイルスなどを除去する必要があります。

食品/きのこ類の栽培

=クラス100,000~100
食品製造のなかでも、特に雑菌やカビの影響を受けやすいきのこ類の栽培においては、最大でクラス100の清浄度が求められます。培地の冷却や種菌の接種などに活用されます。

食品/加工、冷却、梱包など

=クラス100,000~1,000
かまぼこ・ちくわなどの魚肉製品や、ハム・ベーコンなどの食肉製品、弁当や総菜、飲料品、製パン・製菓・製麺など様々な食品の加工工程において、髪の毛や異物の混入を防ぐためクラス100,000~10,000が求められます。冷却や梱包においては、クラス10,000~1,000の清浄度が求められます。

医薬品/研究、開発、製造、無菌室など

=クラス100,000~100
医薬品の研究・開発や製造は、清浄度の高い空間で行われます。注射剤や血清、抗生物質の製造のほか、医療用器具の製造なども含まれます。製薬工程ではクラス100,000~100、特に無菌室での作業においてはクラス100の高い清浄度が求められます。

バイオクリーンルームの様々な規格を以下の表でご紹介します。
取り扱うものにより採用する規格や指針が異なります。
ガイドラインなどを確認し適切な規格を採用する事も重要になります。

EU-GMP 規格

グレード非作業中
最大許容微粒子/㎥ 0.5μm最大許容微粒子/㎥ 5μm
A3,500以下1
B3,500以下1
C35,000以下2,000以下
D3,500,000以下2,000以下
グレード作業中
最大許容微粒子/㎥ 0.5μm最大許容微粒子/㎥ 5μm
A350.0以下1
B3,500以下2,000以下
C3,500,000以下20,000以下
D
グレード作業中のクリーンルームの微生物学的モニタリングの推奨基準
浮遊微生物CFU/㎥落下菌 CFU/90mmΦ,4hrs
A1未満1未満
B100以下5以下
C100以下50以下
D200以下100以下
グレード付着菌CFU/55mmプレート付着菌CFU/5本手袋
A1未満1未満
B5以下5以下
C25以下
D501以下

NASA規格

バイオクリーンルーム級別塵埃粒子微生物粒子
粒径 μm累積粒子数浮遊量1週間あたりの沈降量
個/㎥個/ft3個/㎥個/ft3個/㎥個/ft3
100≧0.53,5001003.50.112,9001,200
10,000≧0.5350,00010,000
≧5.02,3006517.50.564,6006,000
100,000≧0.52,500,000100,000
≧5.025,00070088.42.5323,00030,000

WHO GMP規格

グレード非作業中(at rest)作業中(in operetion)
最大許容微粒子/㎥ 0.5μm最大許容微粒子/㎥ 5μm最大許容微粒子/㎥ 0.5μm最大許容微粒子/㎥ 5μm
A3,500以下03,500以下0
B3,500以下0350,000以下2,000以下
C350,00以下2,000以下3,500,000以下20,000以下
D3,500,000以下20,000以下
グレード作業中のクリーンルームの微生物科学的モニタリングの推奨基準
浮遊微生物 CFU/㎥最大許容微粒子/㎥ 5μm付着菌 CFU/55mm プレート付着菌 CFU/5本手袋
A3未満3未満3未満3未満
B10以下5以下5以下5以下
C100以下50以下25以下
D200以下100以下50以下

日本薬局方

空気清浄度レベルグレード最大許容微粒子数空中最小空気表面付着微生物数
非作業時0.5μm以上作業時0.5μm以上微生物数(CFU/㎥)摂取量(CFU/㎥)機器・設備(CFU/24~30㎤)手袋5指プレートに押す(CFU/24~30㎤)
A(層流作業区域)3,5303,530 < 10.5< 1< 1
B(非層流作業区域)3,530353,000100.555
C353,0003,530,0001000.225
D3,530,0002000.250

クリーンルームの清浄度はプロに相談しよう

上記でご紹介した清浄度クラスはあくまで目安であり、同じ業種であっても、製品や作業内容によって求められる清浄度は異なります。クリーンルームを導入する際は、自社の製品や作業内容に合わせた清浄度クラスを慎重に検討し、設置スペースや予算、運用コストなども考慮したうえで決定するのがよいでしょう。クリーンルーム導入のご検討の際はお気軽に当社へご相談ください。