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クリーンルームとは?
クリーンルームは、様々な製品の製造工程において、目に見えないほど小さなほこりやゴミ、細菌などを混入させないための設備です。半導体や精密機器などの電子部品や、食品および医薬品など、幅広い業界で導入されています。
この記事では、クリーンルームの定義と仕組みについて解説します。クリーンルームの4原則や、用途や気流の方式などによる分類もご紹介します。
クリーンルームの定義と仕組み
温度・湿度や室圧などの環境条件をコントロールして、目に見えないほど小さなゴミや細菌の混入を防ぐことができる部屋を「クリーンルーム」といいます。JISにおいて、クリーンルームは「空気中における浮遊微小粒子、浮遊微生物が限定された清浄度レベル以下に管理され、その空間に供給される材料、薬品、水やその他についても不純物、ゴミを取り除いてゴミを持ち込まないようにしようとする空間」と定義されています。つまり、空気中に漂う微細な微粒子や細菌などの微生物、室内に持ち込まれる物に付着したゴミなども除去して、清浄度クラスに合わせた清浄度管理(コンタミネーションコントロール)を行うための空間といえます。
クリーンルームは、電子部品業界や半導体業界、食品業界、医薬品業界、印刷業界など様々な業界で導入されています。これらの業界では、微細なほこりやゴミ、雑菌や細菌などが製品に付着しないよう細心の注意を払う必要があります。室内の清浄度を保つことはもちろん、室内に入って作業する人員の汗や髪の毛、持ち込まれる材料や薬品なども含めて徹底したコントロールが必要になります。
清浄度を保つための仕組み
目に見えないゴミやほこり、細菌や微生物など、空気中に漂う汚染物質のことを浮遊微粒子・浮遊微生物といいます。微粒子とは、肉眼で見ることができる限度の100分の1という非常に小さな粒子であり、一般的な空気清浄機やエアコンのフィルターでは除去することはできません。そこで、クリーンルームでは浮遊微粒子等を極力除去して清浄度を保つために、様々な環境要因を制御しています。
例えば、空調システムによって室内の温度や湿度を一定に保つことで、作業員の汗や室内で使用する薬品や水が影響を及ぼさないようにします。クリーンルームの出入り口にはエアシャワーが設置されており、作業員や搬入物に付着した汚染物質を吹き飛ばしてあらかじめ除去することができます。さらに、室内と室外の気圧を管理することで気流を制御し、外部からの浮遊微粒子等の混入を防ぎます。
外部からの混入を防ぐのに加え、汚染物質がわずかに混入してしまった場合に堆積させない工夫や、そもそも室内で浮遊微粒子等を発生させないことも重要です。静電気や微振動、ガス成分などに対する対策が施されているクリーンルームもあります。
クリーンルームの4原則
クリーンルームの4原則は以下の通りです。
微粒子や細菌を
・持ち込まない
・発生させない
・堆積させない
・排除する
微粒子や細菌を「持ち込まない」
クリーンルーム内には、微粒子や細菌を持ち込まないことが大前提です。作業員は無塵衣や防塵衣を着用し、クリーンルームの出入口に設置されたエアシャワーで汚染物質を除去してから入室します。室内で使用する材料や部品、機器、薬品等はすべて洗浄してから持ち込みます。さらに、室内から室外へ気流が流れるように室圧を制御することで、浮遊微粒子等が混入しないようになっています。
微粒子や細菌を「発生させない」
クリーンルーム内では、発塵しにくい使用する材料や備品を使用します。また、作業員が無塵衣や防塵衣を着用することで、汗や髪の毛の落下を防ぐほか、衣服のこすれによる静電気やほこりなども発生しにくくなります。作業員がムダな動きをしないよう注意することも重要です。
微粒子や細菌を「堆積させない」
微粒子や細菌がわずかに混入してしまった場合は室内に堆積させないよう、クリーンルーム内部は清掃しやすいようになっています。具体的には、ダクトや配管などの室内露出や、構造の凹凸を極力なくした構造になっています。また、帯電防止や除電によって、静電気で塵やほこりが集まらないように工夫されています。同時に、作業手順の一環として清掃の基準を定めて遵守することも重要です。
微粒子や細菌を「排除する」
混入または発生した微粒子や細菌を速やかに排除するため、発塵しやすい作業場所の近くに排気口を設置する事もあります。また、微粒子等を排出するための気流の形状を妨げないような導線や構造になっています。クリーンルームの清浄度クラスに合わせた換気回数も設定されています。
クリーンルームの用途による分類
クリーンルームは様々な業界で導入されていますが、用途によって以下の2種類に分類されます。
分類 | 主な用途 |
インダストリアルクリーンルーム(ICR) | 主に工業用品等 |
バイオロジカルクリーンルーム(BCR) | 主に食品・医薬品等 |
インダストリアルクリーンルーム(ICR)
電子機器の製造や半導体産業においては、目に見えない微細な塵やほこりなどを排除する必要があり、高性能フィルターによる微粒子の除去や静電気除去など行われます。半導体、液晶ディスプレイ、電子機器、精密機器、自動車など様々な工業品の製造工場などに導入されています。特に、半導体の製造工程においては最高クラスの清浄度が求められるケースもあります。
バイオロジカルクリーンルーム(BCR)
無塵・無菌環境が求められる食品業界や医薬品業界においては、塵やほこり、ゴミ、不純物、虫だけでなく、微生物や細菌などの混入も防いで生物的にも清浄度の高い作業空間が求められます。食品製造工場においては、加工や梱包など様々な工程で異物や微粒子等の混入を防止し、衛生的にクリーンな作業環境を保つ必要があります。医薬品の製造工場や、研究・開発を行う研究所等においても、塵やほこり、微生物、細菌やウイルスなどを除去する必要があります。
クリーンルームの方式による分類
さらに、クリーンルームは気流の方式によって、大まかに以下のように分類されます。
方式による分類 | 気流の流れ |
非一方向流方式(乱流方式) | 吹出口と吸込口を設置することで空気を循環させ、不規則な乱流状態を作り、空気中の微粒子等を希釈する |
垂直一方向流方式(ダウンフロー型) | 天井から床下前面に向けて、垂直一方向に気流を流す |
水平一方向流方式(クロスフロー型) | 吹出口を設置した壁から対面の壁へ向けて水平方向に気流を流す |
非一方向流方式
天井または壁の一部に吹出口を設置し、床あるいは対面の壁付近に吸込口を設置することで空気を循環させ、室内の空気に含まれる微粒子等を希釈して一定の洗浄度を保つ方式です。乱流方式あるいはコンベンショナル型と呼ばれることもあります。空気の循環回数や、換気回数および換気効率によって清浄度をコントロールします。清浄な空気を混合することで室内の空気に含まれる微粒子等の不純物を希釈するという仕組みであり、垂直一方向流方式や水平一方向流方式のように一方向に排出するものではないため、高い清浄度が求められるケースには向きません。乱流方式のなかにもさまざまな種類があり、設置場所の自由度も高いため、予算に合わせて導入できるのがメリットです。また、一方向流方式よりも電力消費量が低く、ランニングコストを抑えることもできます。
垂直一方向流方式
一方向流方式のうち、吹出口を天井付近に設置し床全面を吸込口とすることで、垂直の一方向に気流を流す方式です。整流方式、あるいはダウンフロー 型と呼ばれることもあります。
気流は天井から床への下降流となり、微粒子等が拡散することなく床へ押し出されて排出されることから、微粒子等が堆積しにくく、室内全体の清浄度を均一にコントロールできます。高い清浄度クラスを維持できますが、設備費や維持費は高額であり、空気を常に一方向に流すために電力消費量も多いことから、ランニングコストも高くなる傾向にあります。
水平一方向流方式
垂直一方向流方式と同じく一方向に気流を流す方式ですが、片側の壁に吹出口を設置して対面の壁全面に吸込口を作ることで、水平方向の気流を作ります。クロスフロー 型と呼ばれることもあります。
吹出口のある壁面付近(上流付近)では、特に高い清浄度が保たれます。垂直一方向流方式と同様に高い清浄度クラスを維持できますが、設備費や維持費、ランニングコストは高額です。手術室や無菌病室など、病院内の設備として多く採用されています。
その他の方式
ここで挙げた3種類以外にも、クリーンルームにはクリーントンネル方式やハイブリット局所方式など様々な方式があります。気流の方式によって清浄度も変わるため、取り扱う製品や設置目的に合わせて選択します。
クリーンルームの換気タイプによる分類
最後に、クリーンルームの換気タイプによる分類をみていきましょう。
換気タイプによる分類 | 換気方式 |
オールフレッシュ型 | FFUから清浄な空気を給気 |
循環型 | 室内の空気を循環 |
オールフレッシュ型
室内の空気がすべて入れ替わる換気方式です。FFU(ファンフィルターユニット)等から清浄な空気を送り込み、排気は外部へ自然に排出されます。有機溶剤や危険物、強い臭いを伴う作業などに用いられます。
循環型
室内の空気を循環させてFFU(ファンフィルターユニット)等に給気します。温度や湿度がコントロールされた清浄な空気を循環させることで効率が上がり、省エネ効果が高まります。ただし、扉の開閉などによって空気や微粒子等が混入することで、入退室後の清浄度の回復が遅くなることもあります。
クリーンルーム導入に向けて
クリーンルームを導入するためには、設置場所として一定のスペースが必要です。また、初期投資や運用費用など予算面にも課題があるかもしれません。クリーンルームで作業する際は作業手順やマニュアルを作成し、作業者に遵守させる必要もあります。
しかし、クリーンルームの導入によって、異物混入の防止や不良率の低下など製品の品質管理において様々なメリットがあります。また、微粒子や細菌などの拡散を防ぐ作業環境は、作業者の健康および安全の維持にも役立ちます。クリーンルームの導入を宣伝・公表することで、取引先はもちろん消費者にとっても、安心感や信頼感など企業イメージの向上につながります。クリーンルームの導入にあたっては、自社製品が求める清浄度クラスや設置場所および予算などの条件を検討することが大切です。